2022-03-07
本日は『続名医類案』から「冷疾」の医案をご紹介させていただきます。
趙从先治保義郎①頓公,苦冷疾②,三年,至于骨立③。一日,正灼艾而翁来④,詢其病源,頓以実告⑤。令撤去。時方盛暑,俾就屋開三天窗⑥, 于日光下射⑦処,使頓仰臥,操艾遍舗腹上,約数斤,移時⑧日光透臍腹不可忍,俄而腹中雷鳴⑨下瀉,口鼻間皆濃艾気乃止⑩。明日復為之⑪,如是一月⑫,疾良已。乃令満百二十日⑬,自是宿痾如洗⑭,壮健如少年時。趙曰∶此孫真人⑮秘訣也。世人但知灼艾,而不知点穴⑯,又不審虚実,徒受痛楚,損耗気力。日者太陽真火,艾既遍腹,徐徐照射,入腹之功極 大,五六七月⑰最佳。若秋冬間当以濃艾舗腹,蒙以棉衣,以熨斗盛炭火慢熨之,以聞濃艾気為度,亦其次⑱也。其術甚奇,而中理⑲皆類此。
『続名医類案』より(洪邁⑳『夷堅志』㉑)
①保義郎:官職名。
②冷疾:氷のように冷たく感じる病証。
③骨立:痩せ細って,まるで骨のように直立している。
④正灼艾而翁来:まさしく施灸しようとしていた時に趙三翁がやってきた。
⑤以実告:事実を伝えた。
⑥開三天窗:3つの天窓を掘った。
⑦于日光下射:日光が直射する頃。
⑧移時:しばらくして。
⑨雷鳴:雷に打たれたかのように響いた。
⑩乃止:やっと停止した。艾を撤去した。
⑪復為之:また施灸した。
⑫如是一月:このようにして一ヶ月間日光による艾灸を行った。
⑬百二十日:120日。
⑭自是宿痾如洗:これ以来,病は洗い流したかのようにすっかり治癒した。
⑮孫真人:孫思邈。
⑯点穴:穴位を定めて施灸治療する。
⑰五六七月:農歴の5月,6月,7月。
⑱其次:これは次なる治療法。
⑲中理:内部の道理。
⑳洪邁:(1123~1202)南宋の文学家。
㉑『夷堅志』:洪邁の撰による筆記小説。