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鍼灸臨床医案【結胸1】

【結胸1】

本日は『衛生宝鑑』から「結胸」の医案をご紹介いたします。

「結胸証」は『傷寒論』を出典とし,心窩部が痛み,按えると硬く膨満している病証名のことです。

【原文】

許学士治一婦人病傷寒。寒熱。遇夜則如見鬼状。経六七日。忽然昏塞。涎響如引鋸。牙関緊急。瞑目不知人。病熱危困。召予視之。曰得病之初。曾値月経来否。其家云。経水方来。病作而経遂止。得一二日。発寒熱。昼雖静而夜有鬼祟。从昨日来。不省人事。予曰。此乃熱入血室証。仲景云。婦人中風。発熱悪寒。経水适来。昼則明了。暮則譫語。如見鬼状。発作有時。此名熱入血室。予制以小柴胡湯加生地黄。三服而熱除。不汗而自解矣。又一婦人患熱入血室証。医者不識。用補血調気血薬治之。数日遂成血結胸。或勧用前薬。予曰。小柴胡用已遅。不可行也。無已。則有一方。可刺期門矣。予不能針。請善針者治之。如言而愈。或問熱入血室。何為而成結胸也。予曰。邪気伝入経絡。与正気相搏。上下流行。遇経水适来适断。邪気乗虚入于血室。血為邪所迫。入于肝経。肝受邪則譫語而見鬼。復入膻中。則血結于胸中。何以言之。婦人平居。水養木。血養肝。方未受孕。則下行之為月水。既妊則中蓄之以養胎。及已産則上壅之以為乳汁。皆血也。今邪逐血。并帰于肝経。聚于膻中。結于乳下。故手触之則痛。非薬可及。故当刺期門也。(羅天益『衛生宝鑑』)。

【注釈】

①結胸証:邪気が胸中に結ぼれて出現する心下痛で,これを按えると硬満(硬く膨満)している病証を指す。

②許学士:許叔微(『普済本事方』の著者)。

③遇夜:夜になると。

④値:~にあたる,~に出遭う。

⑤熱入血室:『傷寒論』を出典とする。血室:多くは子宮を指していう。

⑥小柴胡湯:『傷寒論』の処方。柴胡・黄芩・人参・半夏・炙甘草・生姜・大棗。

⑦期門:期門穴(乳下の両脇で,第6肋間にあたる。肝の募穴)。

⑧善針者:高名な鍼灸医師。

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