2022-03-11
本日は,羅天益の『衛生宝鑑』から「驚癇」の医案をご紹介したします。
魏敬甫之子四歳。一長老①摩頂②授記③。衆僧念咒④。因而大恐。遂驚搐。痰涎壅塞。目多白睛。項背強急。喉中有声。一時許方省。後毎見衣皂之人⑤。輒発。多服朱,犀,竜,麝鎮墜之薬。四十余日。前証仍在。又添行歩動作神思如痴。命予治之。診其脉沉弦而急。黄帝針経云。心脉満大。癇瘛筋攣。又肝脉小急。癇瘛筋攣。盖小児血気未定。神気尚弱。因而驚恐。神無所根据。又動于肝。肝主筋。故癇瘛筋攣。病久気弱小児。易為虚実。多服鎮墜寒凉之薬。復損其気。故行歩動作如痴。内経云。暴攣癇眩。足不任身。取天柱穴者是也。天柱穴乃足太陽之脉所発。陽癇附而行也。又云。癫癇瘲。不知所苦。両蹻⑥主之。男陽女陰。潔古老人云。昼発取陽蹻申脉。夜発取陰蹻照海。先各灸二七壮。陽蹻申脉穴在外踝下容爪甲白肉際陷中。陰蹻照海穴。在足内踝下陷中是也。次与沉香天麻湯⑦。服三剤而痊愈。(羅天益『衛生宝鑑』)
①長老:僧侶のうち年・徳ともに高いもの。
②摩頂:仏教における受,または受戒者の頭頂部を摩ること。
③授記:ある種の標記とする。
④念咒:祈りを捧げる。
⑤衣皂之人:黒色の衣服を着た人。
⑥両蹻:奇経八脈の陰蹻脈と陽蹻脈。
⑦沉香天麻湯:沈香・川烏・益知仁・炙甘草・姜屑・独活・羗活・天麻・黒附子・半夏・防風・当帰。