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広東省中医薬局による新型コロナウイルス肺炎の中医薬治療案

 新型コロナウィルス肺炎が猛威をふるっています。中医学では「温病(うんびょう)」「疫病」に属します。そこで,中国ではどんな漢方薬で治療しているのかと思い,ネットを調べてみました。

 あくまでも 「広東省中医薬局 」が提起した治療試案です。これで治療できるというものでもありません。また中国のネット記事であり,あくまでも参考程度に御覧ください。

 広東省中医薬局による通知

「通知」によれば,広東省における状況を観察したところ,本疾患は初・中・極・回復・予防看護期の5段階に分類され,それぞれ異なる中医薬治療案が記載されています。

新型コロナウィルス肺炎は,中医における「疫病」または「温病」の特徴を有します。疫癘の気を外感したもので,病位は表から里へと及び,多くは上・中・下焦と衛気営血の伝変規則に従います。

嶺南の気候は多湿であり,疫癘の気は湿熱を兼挟しやすく,まず肺衛を侵襲し,特に脾胃虚弱体質の者では,正気が邪気に勝てないと,邪毒が里に入って熱へと化し,津液を損傷・消耗し,ひどくなると営分を焼灼して動血し,心胞へと直接伝わり,危険な徴候を発症します。本病の病因は湿熱疫毒にあり,病理的特徴は,「湿・熱・瘀・毒・虚」であるとしています。

1.初期:

①湿邪鬱肺,枢機不利

治法 化湿解毒,宣肺透邪
方剤 藿朴夏苓湯+小柴胡湯加減
組成 藿香,厚朴,法夏,茯苓,柴胡,黄芩,党参,杏仁,薏苡仁,猪苓,沢潟,白蔲仁,淡豆豉,通草,生姜,大棗
頭痛・頭のはれぼったさ +蔓荊子,白芷,薄荷
咳嗽が顕著 +蜜枇把葉,紫蘇子
痰が多い +瓜蔞,浙貝
咽喉部の腫脹 +玄参・疆蚕・射干

②邪熱壅肺,肺失宣降

治法 清熱解毒,宣肺透邪
方剤 麻杏石甘湯+達原飲加減
組成 炙麻黄,杏仁,生石膏,甘草,梹榔,厚朴,草果,知母,白芍,黄芩。
大便がべとつき,スッキリしない +升降散
痰熱がひどく,痰が黄色で粘っこく,多い +桑白皮,川貝,魚腥草,金蕎麦
身熱煩躁 +知母,丹皮,山梔子
呼吸促迫,脱力感 西洋参を煎じて服用する

2.中期:

①邪熱閉肺,腑気不通

治法 清熱宣肺,通腑瀉熱
方剤 宣白承気湯・黄連解毒湯+解毒活血湯加減
組成 生麻黄,杏仁,生石膏,生大黄,栝呂仁,桃仁,赤芍,蒂藶子,黄連,黄芩,桑白皮,重樓,丹皮,欝金,石菖蒲,生地黄,玄参
便秘がひどい +生芒消,虎杖
咳をして黄色く粘っこく濃い痰がでる +栝楼皮,魚腥草
邪熱傷津 +南沙参,石斛,知母または西洋参を煎じて服用する

②湿熱瘟毒,肺気閉塞

治法  清熱化湿,宣肺解毒
方剤 麻杏石甘湯・甘露消毒丹+升降散加減
組成生麻黄,杏仁,生石膏,生甘草,滑石,茵陳,黄芩,白蔲仁,藿香,法夏,蒼朮,蒂藶子,連翹,白僵蚕,蝉退,姜黄,生大黄,重樓,丹皮,赤芍,欝金,石菖蒲,生地黄,玄参。
熱が偏盛 +黄連,魚腥草
湿が偏重 +茯苓,佩蘭
湿熱ともに盛ん +黄連,薏苡仁
肝胆湿熱 竜胆潟肝湯加減

3.極期:

内閉外脱  
治法 益気回陽固脱
方剤 参附湯加減
組成 紅参,炮附子,山萸肉,麦冬,三七
高熱驚厥,神昏譫語 安宮牛黄丸または紫雪散を服用
痰迷心竅 蘇合香丸を冲服

4.回復期:

①気陰両傷,余邪未尽

治法 益気養陰祛邪
方剤 二陳湯+王氏清暑益気湯加減
組成 西洋参,石斛,麦冬,知母,淡竹葉,黄連,甘草,茯苓,法半夏,橘紅,陳皮,炒麦芽。
咳嗽が顕著 北杏,前胡を使用する
湿熱顕著 砂仁,蒼朮,厚朴を使用する
陰虚発熱 +青蒿,地骨皮,十大功労葉
口が乾燥して口渇がはげしい +玄参,天冬
痰に血が混じる +丹皮,山梔子,藕節炭

②肺脾両虚

治法 健脾益気祛痰
 方剤 参苓白朮散加減
 組成 生晒参,炒白朮,茯苓,白扁豆,砂仁,蓮子,炙甘草,桔梗,山薬,薏苡仁,炒麦芽,神麹。
 食欲が顕著に減少 +炒穀麦芽,焦山梔
しつこい湿濁 蒼朮,石菖蒲,白蔲仁
発汗が多い +麻黄根,白芍
口が乾燥して口渇がはげしい +玄参,天冬
血脱を伴う +生晒参,阿膠
動悸,胸騒ぎ +丹参,遠志

一部省略して翻訳してあります。

「温病」にご興味がおありの方は,拙訳「全訳 温病学 基礎編」をどうぞ。

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