2021-03-04
新型コロナウィルス肺炎が猛威をふるっています。中医学では「温病(うんびょう)」「疫病」に属します。そこで,中国ではどんな漢方薬で治療しているのかと思い,ネットを調べてみました。
あくまでも 「広東省中医薬局 」が提起した治療試案です。これで治療できるというものでもありません。また中国のネット記事であり,あくまでも参考程度に御覧ください。
広東省中医薬局による通知
「通知」によれば,広東省における状況を観察したところ,本疾患は初・中・極・回復・予防看護期の5段階に分類され,それぞれ異なる中医薬治療案が記載されています。
新型コロナウィルス肺炎は,中医における「疫病」または「温病」の特徴を有します。疫癘の気を外感したもので,病位は表から里へと及び,多くは上・中・下焦と衛気営血の伝変規則に従います。
嶺南の気候は多湿であり,疫癘の気は湿熱を兼挟しやすく,まず肺衛を侵襲し,特に脾胃虚弱体質の者では,正気が邪気に勝てないと,邪毒が里に入って熱へと化し,津液を損傷・消耗し,ひどくなると営分を焼灼して動血し,心胞へと直接伝わり,危険な徴候を発症します。本病の病因は湿熱疫毒にあり,病理的特徴は,「湿・熱・瘀・毒・虚」であるとしています。
1.初期:
①湿邪鬱肺,枢機不利
治法 | 化湿解毒,宣肺透邪 |
方剤 | 藿朴夏苓湯+小柴胡湯加減 |
組成 | 藿香,厚朴,法夏,茯苓,柴胡,黄芩,党参,杏仁,薏苡仁,猪苓,沢潟,白蔲仁,淡豆豉,通草,生姜,大棗 |
頭痛・頭のはれぼったさ | +蔓荊子,白芷,薄荷 |
咳嗽が顕著 | +蜜枇把葉,紫蘇子 |
痰が多い | +瓜蔞,浙貝 |
咽喉部の腫脹 | +玄参・疆蚕・射干 |
②邪熱壅肺,肺失宣降
治法 | 清熱解毒,宣肺透邪 |
方剤 | 麻杏石甘湯+達原飲加減 |
組成 | 炙麻黄,杏仁,生石膏,甘草,梹榔,厚朴,草果,知母,白芍,黄芩。 |
大便がべとつき,スッキリしない | +升降散 |
痰熱がひどく,痰が黄色で粘っこく,多い | +桑白皮,川貝,魚腥草,金蕎麦 |
身熱煩躁 | +知母,丹皮,山梔子 |
呼吸促迫,脱力感 | 西洋参を煎じて服用する |
2.中期:
①邪熱閉肺,腑気不通
治法 | 清熱宣肺,通腑瀉熱 |
方剤 | 宣白承気湯・黄連解毒湯+解毒活血湯加減 |
組成 | 生麻黄,杏仁,生石膏,生大黄,栝呂仁,桃仁,赤芍,蒂藶子,黄連,黄芩,桑白皮,重樓,丹皮,欝金,石菖蒲,生地黄,玄参 |
便秘がひどい | +生芒消,虎杖 |
咳をして黄色く粘っこく濃い痰がでる | +栝楼皮,魚腥草 |
邪熱傷津 | +南沙参,石斛,知母または西洋参を煎じて服用する |
②湿熱瘟毒,肺気閉塞
治法 | 清熱化湿,宣肺解毒 |
方剤 | 麻杏石甘湯・甘露消毒丹+升降散加減 |
組成 | 生麻黄,杏仁,生石膏,生甘草,滑石,茵陳,黄芩,白蔲仁,藿香,法夏,蒼朮,蒂藶子,連翹,白僵蚕,蝉退,姜黄,生大黄,重樓,丹皮,赤芍,欝金,石菖蒲,生地黄,玄参。 |
熱が偏盛 | +黄連,魚腥草 |
湿が偏重 | +茯苓,佩蘭 |
湿熱ともに盛ん | +黄連,薏苡仁 |
肝胆湿熱 | 竜胆潟肝湯加減 |
3.極期:
内閉外脱 | |
治法 | 益気回陽固脱 |
方剤 | 参附湯加減 |
組成 | 紅参,炮附子,山萸肉,麦冬,三七 |
高熱驚厥,神昏譫語 | 安宮牛黄丸または紫雪散を服用 |
痰迷心竅 | 蘇合香丸を冲服 |
4.回復期:
①気陰両傷,余邪未尽
治法 | 益気養陰祛邪 |
方剤 | 二陳湯+王氏清暑益気湯加減 |
組成 | 西洋参,石斛,麦冬,知母,淡竹葉,黄連,甘草,茯苓,法半夏,橘紅,陳皮,炒麦芽。 |
咳嗽が顕著 | 北杏,前胡を使用する |
湿熱顕著 | 砂仁,蒼朮,厚朴を使用する |
陰虚発熱 | +青蒿,地骨皮,十大功労葉 |
口が乾燥して口渇がはげしい | +玄参,天冬 |
痰に血が混じる | +丹皮,山梔子,藕節炭 |
②肺脾両虚
治法 | 健脾益気祛痰 |
方剤 | 参苓白朮散加減 |
組成 | 生晒参,炒白朮,茯苓,白扁豆,砂仁,蓮子,炙甘草,桔梗,山薬,薏苡仁,炒麦芽,神麹。 |
食欲が顕著に減少 | +炒穀麦芽,焦山梔 |
しつこい湿濁 | 蒼朮,石菖蒲,白蔲仁 |
発汗が多い | +麻黄根,白芍 |
口が乾燥して口渇がはげしい | +玄参,天冬 |
血脱を伴う | +生晒参,阿膠 |
動悸,胸騒ぎ | +丹参,遠志 |
一部省略して翻訳してあります。
「温病」にご興味がおありの方は,拙訳「全訳 温病学 基礎編」をどうぞ。