漢方薬の本場中国では,「清肺排毒湯」が目覚ましい効果を上げているようです。
中国の報道によれば,本処方は葛又文(かつ・ゆうぶん)先生が,長期間にわたるインフルエンザなどの流行性感染症の治療経験に加え,武漢における病例を観察・分析し,さらに中医学の「五運六気」理論を融合したうえで,古典『 傷寒雑病論 』の4処方「麻杏石甘湯」「五苓散」「小柴胡湯」「射干麻黄湯」の処方を組み合わせることにより開発された処方であるとのことです。
『傷寒論』の4処方については,他のサイトでも詳しく説明されていると思いますので,ここでは「五運六気」について簡単に解説しようと思います。
中医学における「五運六気」とは,日本では簡略して「運気」と呼ばれています。これは天時における気候変化および気候変化が,人間を含む生物に及ぼす影響を研究したものです。
これらの内容は現存する最古の医学書とされる『黄帝内経素問』の「六節蔵象論篇」「天元紀大論篇」「五運行大論篇」「六微旨大論篇」「気交変大論篇」「五常政大論篇」「六元正紀大論篇」「至真要大論篇」に記載されています。
ここからは,あくまでも私の推測になります。
例えば今年は「庚子歳」なのですが,今年の歳運は庚なので「金の太過」の歳,歳支は子なので,「水」気の歳になります。また少陰君火が司天,陽明燥金が在泉にあるので,「歳運の庚金」と「在泉の陽明燥金」の「金」つながりによる同天符になります。
本来ならさらに様々な五行関係を融合させることにより判断するものなのですが,とりあえず横に置いておいて,「庚金」と「子水」の関係について考えてみましょう。これは「金生水」という関係にあり,今年は「水」の作用を強く受ける歳なんだろうなと想像できます。
また同様に司天の気である少陰君火により,「火剋肺金」も起こるのかな?と想像できます。
このような視点から「清肺排毒湯」を見てみると,
肺の火を消す「麻杏石甘湯」
痰を祛り咳を止める「射干麻黄湯」
体の水をさばく「五苓散」
天と地の間にある人間の中焦の気を調える「小柴胡湯」
から構成されるのかな?と思ったりしています。
この方剤は日本の保険漢方では使用できませんが,保険適用のエキス剤を混合することにより,この方意に近い処方が考えられています。
いずれにせよコロナはやく収まって欲しいものです。