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鍼灸臨床医案の紹介【風痰1】

鍼灸臨床医案

【風痰1】

「風痰」とは,風邪によって生じた痰証のひとつです。

本日は『衛生宝鑑』から「風痰」の医案をご紹介いたします。

【原文】

参政楊公七旬有二。宿有風疾。于至元戊辰春。忽病頭旅眼黒。目不見物。心神煩乱。兀兀欲吐,復不吐。心中如懊憹之状。頭偏痛。微腫而赤色。腮頬亦赤色。足 冷。命予治之。予料之。此少壮之時。喜飲酒。久積湿熱于内。風痰内作。上熱下寒。是陽不得交通。否之象也。経云。治熱以寒。雖良工不敢廃其縄墨。而更其道也。然而病有遠近。治有軽重。参政今年高気弱。上焦雖盛。豈敢用寒凉之剤。損其脾胃。経云。熱則疾之。又云。高巓之上。射而取之。予以三棱針約二十余処刺之。其血紫黒。如露珠之状。少頃。頭目便覚清利。諸証悉減。遂処方云。眼黒頭旋。虚風内作。非天麻不能除。天麻苗謂之定風草。此草独不為風所揺。故以為君。頭偏痛者,乃少陽也。非柴胡,黄芩酒制不能治。黄連苦寒酒炒。以治上熱。又為因用。故以為臣。橘皮苦辛温。炙甘草甘温補中益気為佐。生姜,半夏辛温。能治風痰。茯苓甘平利小便。導湿熱引而下行。故以為使。服之数服。邪気平。生気復而安矣。(羅天益『衛生宝鑑』)

【注釈】

①参政:官職名。元代において中書省・行中書省に参政として副貳官を置いた。

②七旬有二:72歳。

③宿:平素。

④至元戊辰:元・元至5年(1268年)。

⑤兀兀:用心する様子。

⑥懊憹:煩悩,苦しむ。

⑦否:64卦のひとつ。乾が上で,坤が下にある。『易経』に「天地不交,否」とある。

⑧縄墨:直線を引く道具,ここでは法則,規則の喩え。

⑨道:道理,規律。

⑩熱則疾之:熱に属する病証に対し刺鍼する場合には,速刺法が必要である。

⑪高巓:頭部を指す。

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