鍼灸臨床医案【灸瘡不発】

本日でご紹介する医案をもちまして，これまでご紹介してまいりました「鍼灸臨床医案」は最終日となりました。

「灸瘡不発」とは，読んで字の如く「灸痕」ができないものです。昔（現在の日本でも行われています）は施灸して，膿を出させることにより人体の免疫機能を活性化させていました。

かなりの長文ですが，頑張って読んでみましょう。

【灸瘡不発】

国信副使覃公中四十九歳。至元丙寅^①春。病臍腹冷疼。完谷不化。足胻寒而逆。皮膚不仁。精神困弱。診其脉沉細而微。遂投以大熱甘辛之剤。及灸気海百壮。三里三穴各三七壮。陽輔各二七壮。三日後以葱熨。灸^②瘡皆不発^③。復灸前穴^④根据前壮数。亦不発。十日後。瘡亦更不作膿。瘡口皆干。癸丑歳^⑤初。予随朝承応。冬屯于瓜忽都地面。学針于窦子声^⑥先生。因詢穴腧 。曰。凡用針者気不至而不效。灸之亦不発。大抵本気空虚。不能作膿。失其所養故也。更加不慎。邪気加之。病必不退。異日因語針灸科忽教授。亦以為然。至元戊辰^⑦春。副使除益都府判^⑧。到任未几時。風疾。半身麻木。自汗悪風。妄喜笑。又多健忘。語言微涩。医以続命湯^⑨復発其汗。津液重竭。其証愈甚。因求医還家。日久神気昏憒。形容羸瘦。飲食無味。便溺遺失。扶而後起。屡易医薬。皆不能效。因思内経云。陽気者若天与日。失其所則折寿而不彰。今因此病。而知子声先生之言矣。或云。副使肥甘足于口。軽暖足于体。使令足于前。所為無不如意。君言失其所養。何也。予曰。汝言所養。養口体^⑩者也。予論所養。養性命者也。且覃氏壮年得志。不知所養之正。務快于心。精神耗散。血気空虚。因致此疾。霊枢経云。人年十歳。五臓始定。血気已通。其気在下。故好走。二十歳血気始盛。肌肉方長。故好趨。三十歳五臓大定。肌肉堅。血気盛満^⑪。故好歩。四十歳五臓六腑十二経脉。皆大盛以平定。腠理始疏。華荣頽落。発頗斑白。平盛不揺^⑫。故好坐。五十歳肝気始衰。肝叶始薄。胆汁始減^⑬。目始不明。六十歳心気始衰。善憂悲^⑭。血気懈惰。故好臥。七十歳脾気始衰。皮膚已枯^⑮。八十歳肺気衰。魄魂散離^⑯。故言善誤。九十歳腎気焦臓枯。経脉空虚^⑰。百歳五臓皆虚。神気皆去。形骸独居而終矣^⑱。盖精神有限。嗜欲無窮。軽喪性命。一失難復。其覃氏之謂欤。（羅天益『衛生宝鑑』）

【注釈】

①至元丙寅：

②葱熨。灸：

③瘡皆不発：

④前穴：

⑤癸丑歳：

⑥窦子声：

⑦至元戊辰：

⑧府判：

⑨続命湯：

⑩口体：

⑪肌肉堅。血気盛満：

⑫平盛不揺：

⑬胆汁始減：

⑭善憂悲：

⑮脾気始衰。皮膚已枯：

⑯魄魂散離：

⑰腎気焦臓枯。経脉空虚：

⑱形骸独居而終矣：