2022-03-11
昨日は雨が雪になりました。最近は天気予報もなかなか当たらなくなってきました。
本日ご紹介する医案は「滞鍼」です。「滞鍼」とは,鍼が体から抜けなくなってしまうことです。
日本では細い鍼を使用するので,筋肉の急激な緊張により抜けなくなることがあります。それに対して「返し鍼」などを行います。以前は銀鍼を使用していましたが,今日ではステンレス製の鍼が一般的ですので,鍼が折れる心配はほとんどありませんから,あまり心配はありません。
次回は鍼が折れてしまった「折鍼」の医案をご紹介する予定です。
【滞鍼1】
德宗時①有朝士②墜馬傷足,国医③為針腿,針不出④,有気如烟出,朝士困憊,将至不起,国医惶惧,有道士詣門⑤云∶某合⑥治得。視針処責国医曰∶公何容易,生死之穴,乃在分毫。人之血脉相通如江河,針灸在思其要津。公亦好手⑦,但誤中孔穴。乃令舁床⑧就前,于左腿気満処⑨下針曰∶此針下,彼針跳出,当至檐板。言訖,遂針入寸余,旧穴之針,沸然跃出,果至檐板。気出之処,泯然⑩而合,病者当時平愈。朝士与国医拜謝,以金帛贈貽,道士不受,啜⑪茶一甌⑫而去。(魏之琇『続名医類案』)
【注釈】
①德宗時:清・光諸年間(1875~1908)。徳宗:愛新覚羅・載湉。
②朝士:中央の官吏全般を指す(朝廷に仕えるもの)。
③国医:御医。
④針不出:抜鍼できない。
⑤詣門:自身が尊敬する人のところへ出向く。
⑥合:全。
⑦公亦好手:あなたの医術は非常に優れている。公:ここでは国医に対する尊称。
⑧舁床:ベッドを担ぐ。
⑨気満処:経気が満ちているところ。
⑩泯然:消失するという意味。
⑪啜:するる,飲む。
⑫甌:お盆類の陶器,小さい瓶。