本日でゴールデンウィーク最終日となりました。今年のゴールデンウィークは自宅庭の草取りしながら外出自粛しておりました。
本日の医案は『鍼灸大成』から「痞疾」のカルテになります。
「痞疾」の「痞」とは,「つかえる」と読み,易でいう「天地否」の「痞」です。古代においては「否」と「痞」は通假文字でした。気が滞ったことによる病証を指します。
戊辰①歳,吏部觀政②李邃麓公,胃旁一痞塊③如覆杯④,形体羸瘦,薬勿愈。余視之曰:『既有形於内,豈薬力所能除,必針灸可消。』詳取塊中,用以盤針之法⑤,更灸食倉⑥,中脘穴而愈。邃麓公問曰:『人之生痞,與痃癖,積聚,癥瘕是如何?』曰:『痞者,否也,如『易』所謂天地不交之否,内柔外剛,萬物不通之義也。物不可以終否,故痞久則成脹滿,而莫能療焉。痃癖者,懸絶隱僻,又玄妙莫測之名也。積者,跡也,挾痰血以成形跡,亦鬱積至久之謂爾。聚者,緒也,依元気為端緒,亦聚散不常之意云。癥者,征也,又精也,以其有所征驗,及久而成精萃也。瘕者,假也,又遐也,以其假借気血成形,及歴年遐遠之謂也。大抵痞與痃癖,乃胸膈之候,積與聚,為腹内之疾,其為上,中二焦之病,故多見於男子。其癥與瘕,独見於臍下,是為下焦之候,故常見於婦人。大凡腹中有塊,不問男婦積聚,癥瘕,倶為悪症,切勿視為尋常。初起而不求早治,若待痞疾脹滿,已成胸腹鼓急,雖扁鵲復生,亦莫能救其萬一,有斯疾者,可不懼乎!』李公深以為然。(楊継洲『鍼灸大成』)
①戊辰:明・隆慶2年(1568年)。
②吏部觀政:吏部内所に設けられた官職名。
③痞塊:腹腔内部の積塊を指す。
④覆杯:ひっくり返した杯。ここでは痞塊の形状を表現したもの。
⑤盤針之法:刺鍼・刺入後,鍼柄を持って鍼を360°ぐるぐる回す手法。鍼下の得気を促進する作用があるとされる。
⑥食倉:経外奇穴名。中脘穴の外側3寸。