2022-03-11
本日は『衛生宝鑑』から「大便下血」の医案をご紹介いたします。
真定①総管史②侯男十哥。年四十有二。肢体本瘦。弱。于至元辛巳③。因收秋租。佃人致酒。味酸不欲飲。勉飲三両杯。少時腹痛。次伝泄瀉無度。日十余行。越十日。便後見血。紅紫之類。腸鳴腹痛。求医治之。曰諸見血皆以為熱。用芍薬柏皮丸治之。不愈。仍不欲食。食則嘔酸。形体愈瘦。面色青黄不澤。心下痞。悪冷物。口干。時有煩躁。不得安臥。請予治之。具説其由。診得脉弦細而微遅。手足稍冷。内経云。結陰者便血一升④。再結二升。三結三升。経云。邪在五臓。則陰脉不和。陰脉不和。則血留之。結陰之病。陰気内結。不得外行。無所禀。渗入腸間。故便血也。宜以平胃地榆湯⑤治之。
【平胃地榆湯】
蒼朮(一銭) 升麻(一銭) 黒附子(炮。一銭) 地榆(七分)
陳皮 濃朴 白朮 乾姜 白茯苓 葛根(各半銭)
甘草(炙) 益智仁 人参 当帰 曲(炒) 白芍薬(各三分)
上十六味。作一服。水二醆。生姜三片。棗子二个。煎至一醆。去渣。温服。食前。此薬温中散寒。除湿和胃。服之数服。病減大半。仍灸中脘三七壮。乃胃募穴。引胃上升。滋荣百脉。次灸気海百余壮。生発元気。灸則強食生肉。又以還少丹服之。則喜飲食。添肌肉。至春再灸三里二七壮。壮脾温胃。生発元気。此穴乃胃之合穴也。改服芳香之剤。戒以慎言語。節飲食。良愈。(羅天益『衛生宝鑑』)
①真定:地名,河北省正定。
②総管史:特定の事物を管理するため特設された官。
③至元辛巳:元至元18年(1281年)。
④結陰者便血一升:結陰とは陰気が結滞して通じないこと。
⑤平胃地榆湯:ここでは『衛生宝鑑』の記載処方。