2021-06-26
『景岳全書』からの痞疾の医案になります。ちょっと長文ですが,それ程難しくないと思いますので,気楽に読んでみましょう。
触診により章門穴が痞えていることを見抜いて治療しています。
余①嘗治一姻家子,年力正壮,素日②飲酒,亦多失飢傷飽。一日偶因飯後脇肋大痛,自服行気化滞等薬,復用吐法,尽出飲食,吐後逆気上升,脇痛雖止,而上壅胸膈,脹痛更甚,且加嘔吐。余用行滞破気等薬,嘔痛漸止,而左乳胸肋之下,結聚一塊,脹実拒按,臍腹隔閉,不能下達,毎于戌,亥,子,丑之時③,則脹不可当。因其嘔吐既止,已可用下,凡大黄,芒硝,棱,莪,巴豆等薬,及蘿卜子,朴硝,大蒜,橘叶搗罨等法,無所不尽,毫不能效,而愈攻愈脹,因疑為脾気受傷,用補尤覚不便,湯水不入者凡二十余日,無計可施,窘劇待斃,只得用手揉按其処。彼云肋下一点,按着則痛連胸腹,及細為揣摸,則正在章門穴也。章門為脾之募,為臓之会,且乳下肋間,正属虚裏大絡,乃胃気所出之道路,而気実通于章門,余因悟其日軽夜重,本非有形之積,而按此連彼,則病在気分無疑也。但用湯薬,以治気病,本非不善,然経火則気散,而力有不及矣。乃制神香散,使日服三四次,兼用艾火灸章門十四壮,以逐散其結滞之胃気,不三日脹果漸平,食乃漸進,始得保全,(張景岳④『景岳全書』⑤)
【注釈】
①余:張景岳を指す。
②素日:平素,普段。
③戌,亥,子,丑之時:戌の時は19:00~21:00,亥の時は21:00~23:00,子の時は23:00~1:00,丑の時は1:00~3:00
④張景岳:張介賓(1563~1640)。
⑤『景岳全書』:張景岳により1624年成書となる。「陽は有余にあらず,真陰が不足する」なる理論を提起した。